Piyochiのブログ

ゲームと漫画とミステリの話をしようと思う。

殺戮にいたる病 の話

殺戮にいたる病について

 

聞いたことない方には何の事なのか

この人は何を急にヤバい事を言い出したのか

メンタルが病んでしまったのか

とうとう、ダークサイドに堕ちたのか

なんだかヤバい病気の話というわけでは無い

いや、ヤバいはヤバいんだ、ヤバ谷園なのだ

 

しかし心配ゴム用である

 

 

殺戮にいたる病

 

 

とは、我孫子武丸(あびこ たけまる)先生によるミステリ小説で

実は、後から知ったのだが、かなり有名な作品らしく

[小説] [ミステリ] [オススメ]

辺りで検索すれば、大抵の◯◯選!などに名を連ねる名作である。

 

我孫子武丸先生といえば

当時、コンシューマ機のノベルゲームのハシリであった SFC 弟切草 に続く第2作目である

SFC かまいたちの夜 のシナリオを担当されており

選択肢によるマルチシナリオ、犯人を推理して自らが解き明かしていくそのゲーム内容は

当時、中学生の私に大いに刺さるものがあった

特に、友人らと推理を重ね話し合い

正規ルートと思われる正解に辿り着けた時の感動は、今でも忘れる事はない。

 

 そもそも本作品との出会いは

何気なく見ていたYouTubeLIVE

あのにしむらひろゆきの配信である

最近、稀に雑談配信の様なものをやっていて

たまに観るのだが、何処の誰だったかが

ひろゆき氏に質問した

 

「オススメのミステリは何ですか?」

 

こんな感じの簡単な質問だったと思う。

(オススメの小説は何ですか?だったかも知れない)

配信内容は、基本的にリスナーがひろゆき氏に

あらゆる質問を投げかけて、ひろゆき氏が適当に答える(時事問題や人生相談の様なもの)

そんな流れなのだが、その中で偶々耳に入ったこの質問に対して

 

殺戮にいたる病

 

と、サラッと答えていた。

 

何処かで聞いたのかも知れないし、書店で見かけた事があったのかもしない

その題名にピンときて何か引っかかるものを感じ、早速検索をしてみると上記の通り、あの我孫子武丸先生の作品との事ですぐさまポチることに抵抗は無かったのだった。

 

 

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)

 

 

"東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねる

シリアルキラーが出現した。

くり返される凌辱の果ての惨殺。"

(本書の裏表紙より一部抜粋)

 

裏表紙に書かれている通り、本書は猟奇的殺人を扱っており、凌辱の果てのとあるように

フィジカルの面でも、メンタルの面でも

*グロ描写があるので、苦手な方はお気をつけください。*

 

 

↓以下、ネタバレを含む↓

 

猟奇的殺人者とその家族

引退した刑事と被害者の妹らが軸となり話は進んで行く。

本書の大仕掛については、正直まったく気付かなかった

最後のページに辿り着き、彼女の最後の台詞を聞いても頭が追いつかなかった

ただ、呆然と

 

「は?…どういう事?…」

 

言ってる事は分かるが、意味が分からない

そんな状態になってしまった。

まさにポルナレフ状態。

 

叙述トリックというのは、ミステリにおける定番であり、今作はその中でも人物に焦点を当てたトリックなのだが

今作は、その犯罪の特異性やその描写もさる事ながら上手く読者をミスリードさせる仕掛けが巧みに散りばめられており、見事に騙されたわけだ。

 

しかし、ミステリとなれば疑って読み進めてしまうもので、モノによっては後半に差し掛かる前にも仕掛けが見え透いて来そうなものだが…

そうはならなかった理由はいくつもある。

 

中でもずっと引っかかる点があり

そこにこそ今作の謎があるのではと読み進めていたが、そうでも無かった様だ

ある意味そのせいで仕掛けにあっさりと騙されたとも言える。

 

ここは、個人的な見解だが

今作は、異常な人間が、実は二人いると思っていて

その一人は、当然猟奇的殺人者の犯人その人

もう一人おかしな人がいるのだ

その事が気になり読み終わった後に

他者のレビューなどを流し読みしたが、大仕掛けの話とグロ描写についてばかり言及されているので、もしかしたら私だけが"彼女"を異常だと思っているのだろうか…?

というのが、引っかかっていた点

 

既読の方の中には、同じ様に"彼女"の異常性を不思議に感じた人もいるかと思うが。

 

その"彼女"とは雅子である

 

蒲生 雅子は、名前の通り猟奇的殺人者である蒲生 稔の家族の一人

雅子は、息子が殺人者なのではと薄々と感じて

息子が不在の間に、部屋を調べ

ある日、見てはいけないモノを見つけてしまう…

 

ここで一番の問題があって

母親が息子の性の問題について気にする

この様なことは、特段おかしな事ではないかと思うが、この雅子氏、息子の部屋中調べまわり

エロ本の在りかから、ゴミ箱を漁りオナティッシュを確認して息子のオナニー回数を、週に何回程度かまで把握するという

 

かなりの異常性

 

作中では雅子氏も、息子を愛するが故に

息子の心配をするのは当然なんだと

自分に言い聞かせ息子の部屋を探し回り

以前は週に3〜4回だったのが、最近は週に1〜2回に減ってる!おかしい!彼女でも出来たのかしら?そんな素振りも無いし臭いもしない…

 

「いやいやいや、そらこんな母親がいたら息子さんグレますよ」

と思わせるのも、もしかしたら我孫子先生の巧妙なトリックの一端なのか。

 

後半は雅子氏の異常性が目についてしまって

色々見逃した部分も多そうだ。

何より思ったのが

「雅子氏のこれって普通じゃないよね?」

という事

流石に週ペースまで把握するのは常軌を逸してると言わざるをえないだろう。

 

そしてこれは、女性または息子のいる母親からみたらどう思うのだろうか?

ペースまで把握は流石におかしく無いか?

セクハラにならない程度に女性目線の意見を聞いてみたいところである。

 

同年代であれば、丁度思春期の息子を持つ母親も居そうであるが、そんなことを聞ける相手は居ないしなぁと思ってみたが

そもそも、女性の友達も知り合いも居ないんだった。

 

 

ただの不健康なおじさんが一人。

殺戮にいたる病には罹らない様に。